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大人のADHD(注意欠如・多動症)とは?症状・診断・治療と受診の目安[2026年9月8日]

ADHDは発達障害の一つで、以前は主に子どもの頃に気づかれ、児童精神科で診る障害として捉えられていました。しかし今では、成人された方が初めて病院で「自分はADHDでは?」という相談をされることも珍しくありません。

ADHDは「注意欠陥・多動性障害」とも呼ばれてきましたが、現在は「注意欠如・多動症」という名称が使われています。今回は、その特徴と、大人になってから困りごとが表面化する背景、受診や治療についてお話しします。

ADHDの症状と、子どもの頃に気づかれる場合

どんな病気や障害でも、「重い」「軽い」と一般的に表現することは多いですが、ADHDも特徴の現れ方や生活への影響には個人差があります。

例えば、幼少期から多動や衝動性が目立つ場合には、授業中に落ち着きなく席から離れたり、教室から飛び出したりすることがあります。また、気持ちを抑えることが難しく、気に入らないことがあると物や人に当たってしまう場合もあります。ただし、こうした行動がすべてのADHDの方にみられるわけではありません。

不注意の症状としては、忘れ物が多い、約束事を忘れてしまう、片付けや整理整頓に著しい困難がある、といったことが挙げられます。何かに夢中になっていると、何度呼ばれても気づかないように見えることもあります。

こうした特徴が目立ち、学校や家庭での生活に支障が出ていると、児童期や学生のうちに周囲から病院受診を勧められ、診断につながることがあります。

これらの症状がすべて揃っていなければADHDではない、ということではありません。
多動や衝動性があまり目立たず、不注意を中心に困りごとが生じている方もいらっしゃいます。

学生のうちは気づかれず、大人になってから相談される理由

上記したような特徴があったとしても、ご家族の毎日のフォローによって、生活が何とか保たれている場合もあります。

また、ADHDと知的障害は別のものであり、ADHDだからといって学業成績が総じて低いわけではありません。興味のある教科では、むしろ高い成績を収める方もいらっしゃいます。

そのため、周囲とのトラブルにつながるような多動や衝動性が目立たない場合には、本人は忘れ物や片付けなどに苦労していても、学生のうちは病院の受診まで至らないケースもあります。

そして、学校を卒業して就職すると、これまでのように周囲がフォローすることが難しくなり、自分で予定や仕事の進め方を管理する場面が増えます。そこで、学生の時には目立たなかったADHDの特徴による問題が、表面化しやすくなることがあります。

大人になってから初めて気づかれる場合も、診察では、現在の困りごとだけでなく、子どもの頃からどのような特徴があったかを確認していきます。

仕事でのミスが続き、不眠やうつ症状につながることも

入社直後は「まだ新人だから」と周囲が受け止めてくれるかもしれません。しかし、数か月以上経っても、複数の仕事を任されるとミスを繰り返したり、言われたことを忘れたりする状態が続くと、本人も周囲も対応に悩むようになります。

本人がメモを欠かさないようにしていても、メモしたこと自体を忘れたり、確認するタイミングを逃したりして、同様の失敗が続いてしまうこともあります。

そうして周囲からの目が厳しくなると、ストレスが増し、不眠や気分の落ち込み、うつ症状などの二次的な不調が現れる場合があります。大人の場合は、この時点で初めて病院を受診しようと思う方もいらっしゃいます。

努力していないのではなく、努力や工夫だけでは補いきれない難しさを抱えている場合があります。
そのことを、ご本人にも周囲の方にも知っていただけたらと思います。

一方で、睡眠不足やうつ、不安などによっても、集中しにくさや物忘れは生じます。そのため、ミスや忘れ物が多いということだけでADHDと決めつけず、診察で背景を整理することが大切です。

ADHDはいつ受診すべきでしょうか

いつ受診すべきかということは、悩ましい面があると思います。

受診を考える一つの目安

工夫や努力をしても困りごとが続き、仕事や学校、家庭での生活に支障が出ている時です。
不眠や気分の落ち込みが強くなるまで、我慢する必要はありません。

職場にしても、児童期の学校にしても、診断によって特性が整理されることで、周囲に対処や配慮について説明しやすくなります。どのような場面が苦手で、どのような助けがあると取り組みやすいかを、一緒に考えるきっかけにもなります。

もちろん、診断がつかなければ工夫や相談ができないわけではありません。「自分がADHDかどうか分からない」という段階でも、今困っていることをお話しいただければと思います。

ADHDの治療とお薬について

工夫や努力を続けても状況が変わらない時は、受診することで、ADHDの特性による困りごとと、不眠やうつなどの二次的な不調の両方について、改善に向けた方法を考えることができます。

治療では、仕事の手順を分かりやすくする、予定を確認しやすい仕組みをつくるなど、ご本人に合った工夫や環境調整を考えます。そのうえで、必要に応じてお薬による治療も検討します。

不眠やうつに対する治療だけでなく、ADHDの不注意や多動性・衝動性を和らげるために、アトモキセチンやインチュニブ(一般名:グアンファシン)などのお薬もあります。

お薬の必要性や合う種類は一人ひとり異なりますので、効果と副作用を確認しながら、ご本人の希望も踏まえて相談していきます。受診したからといって、必ずお薬を使うということではありません。

もし、ここに書いたようなことでお困りになり、苦しんでこられた方は、一人で抱え込まず、受診の際にご相談いただけたらと思っています。

精神科専門医 山田 雄弘

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介護うつ病とは|認知症介護・家族介護の負担で心が限界になる前に[2026年6月24日]

高齢化社会と言われて久しくなりました。それに伴い、認知症の方や、慢性的な重い疾患を抱える方をご家族が介護する場面も増えています。

介護は、単に「手伝う」「見守る」という言葉だけでは表しきれない、長く、終わりの見えにくい負担を伴うことがあります。特に、ご家族のどなたかお一人に介護の負担が集中している場合、その心身への影響は非常に大きなものになります。

介護うつ病とは

認知症や慢性疾患を持つご家族の介護を続けるなかで、介護する側の方に 気力の低下、不眠、食欲不振、疲労感、集中力や判断力の低下 などのうつ症状が続くことがあります。

このように、介護による強いストレスや慢性的な疲労を背景として、介護する方自身にうつ症状があらわれる状態を、一般的に 「介護うつ病」 と呼ぶことがあります。

介護うつ病は、介護する方の弱さや甘えではありません。むしろ、長期間にわたりご家族を支え続け、限界を超えるほど努力されてきた結果として、心と体が悲鳴をあげている状態と考えるべきです。

認知症介護では、ご家族の負担が非常に大きくなることがあります

認知症の症状にはさまざまなものがあります。物忘れや、身の回りのことが少しずつ難しくなる段階でも、ご家族の負担は決して軽いものではありません。

さらに、症状が進むにつれて、 徘徊、昼夜逆転、強い不安、怒りっぽさ、被害妄想、介護への拒否 などがみられるようになると、日々の対応はより過酷になっていきます。

精神科の診療によって、認知症に伴う不眠、不安、興奮、妄想などの症状を軽減できる場合もあります。しかし、それでもなお、介護するご家族が毎日向き合わなければならないストレスは、誰にも簡単に代われるものではありません。

介護うつ病でみられやすい症状

介護を続けるなかで、次のような状態が続いている場合は、介護うつ病やうつ状態の可能性があります。

  • 以前より気力が出ない
  • 眠れない、途中で何度も目が覚める
  • 食欲が落ちている
  • 疲れているのに休めない
  • 涙もろくなった
  • 集中力や判断力が落ちた
  • 小さなことで強く落ち込む、またはイライラする
  • 介護のことを考えると動悸や不安が強くなる
  • 「もう限界かもしれない」と感じることが増えた

これらの症状が続く場合、早めに精神科・心療内科へ相談することが大切です。

介護うつ病がつらい理由

どのような病気であっても、原因となっている環境から距離を取ることが、治療や回復につながることがあります。

しかし、介護うつ病の場合、その原因である介護から離れることが現実的に難しい場合が少なくありません。

「自分がやらなければならない」
「他に頼れる人がいない」
「施設に入りたくても空きがない」
「本人がサービスを拒否する」
「家族のなかで自分だけが抱えている」

こうした状況が続くと、休むことも、泣くことも、怒ることもできないまま、心身の負担だけが積み重なっていきます。

介護する方ご自身も、診療を受けてよいのです

介護の果てに、本当に痛ましいニュースを耳にすることがあります。当院は、そのような出来事が一切なくなることを願っています。

介護ストレスによって、不眠、気力低下、食欲不振、強い不安、抑うつ気分などの症状が出てきた場合、あるいは「とにかくどうしようもなくつらい」と感じた場合は、できるだけ早く受診していただきたいと思います。

診察では、症状を治療することだけでなく、日々の介護の大変さを言葉にしていただくことも大切です。誰にも言えなかった苦しさを話すこと自体が、回復の第一歩になる場合があります。

適切な表現であるかはわかりませんが、ご自身が病気になるほどまでご家族の介護を続けてこられた方に対して、当院は深い敬意を持っています。

介護する方が倒れてしまう前に、どうか早めにご相談ください。

認知症だけでなく、慢性的な重い病気の介護にも起こりえます

介護うつ病は、認知症の介護だけに限ったものではありません。

がん、難病、脳血管障害、身体障害、精神疾患、その他の慢性的な重い病気を持つご家族を長く支えている方にも、同じように心身の限界が訪れることがあります。

介護は、医療や福祉の制度だけでは支えきれない部分を、ご家族が担い続けている現実があります。その負担は、外から見えにくく、周囲に理解されにくいことも少なくありません。

越谷こころクリニックでのご相談について

越谷こころクリニックでは、介護によるストレス、介護疲れ、介護うつ病、不眠、不安、気力低下などについて、精神科・心療内科の診療を行っています。

症状の治療とともに、筆舌に尽くしがたい継続する介護の大変さを、少しでも共有したいと考えています。

「この程度で受診してよいのだろうか」
「自分が我慢すればよいだけではないか」
そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、介護する方の心身が限界を迎える前に相談することは、ご本人のためだけでなく、介護を受けるご家族を守ることにもつながります。

※強い希死念慮がある場合、自分やご家族を傷つけてしまいそうな不安がある場合、または緊急性が高い場合は、医療機関、救急、地域の相談窓口などへ早急にご相談ください。

精神科専門医 山田 雄弘

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