過去の性被害によるPTSDについて
昨年来、有名な芸能事務所の創業者からの多人数の性被害のニュースが出て以来、異性から同性からの性被害性暴力の事件を耳にすることが増えてきました。
小生が約30年心療内科、精神科の診療に就いてきて、ここ最近増えた訳ではなくようやく表に以前よりは出るようになった現状なんだと感じます。
実際心療内科の診療の場面ですら、最初は不眠や気分の浮き沈みやその時その時の生活上のストレスについての相談であったのが、何度か通院されて初診から数年経ち、ある程度関係性が深まってから過去にご本人が受けた性被害について告白される方が越谷こころクリニックだけでも複数名いらっしゃいました。
中にはその性被害が家族からという方もいらっしゃいました。誰にも言えないまま成人の年齢になり性被害を受けた相手と生活上の接触がなくなり実害は受けなくなって新しい日常を送っていても、その記憶が消失することはなくその時その時の何かの刺激でフラッシュバック、パニック発作などの症状が起こり原因から物理的に距離をとっても生活に大きな支障をもたらし続けます。
以前に比べて表には出るようになったと上述しましたが、その事実を病院以外に告白することは現在も大変な葛藤が伴うことは今も昔も変わりません。
自分が何十年も苦しんできたことを告白することが家族も含めて人間関係を大きく揺るがせることになることにご本人を二重に苦しめ、それもまた精神症状に繋がります。
記憶そのものを消すことはできない、では心療内科医に何ができるのか今も模索しながら診察を続けています。少なくとも診療の場がどんな話も聞く、話していただける場であり続け何ができるかを一緒に考え少しでも1人ではないと感じていただけたらと願っています。
そして世界の全ての人が性加害は間違いなく暴力なんだという認識が当然の世の中になるよう訴えていきたい所存です。
精神科専門医 山田 雅弘