〜ロスによるうつなどの精神症状について〜
人と人との関係、人と何かとの関わりは、どれ一つとして同じものではありません。
その深さや大切さは、他人と比べられるものではなく、ご本人ですら、失ってはじめてその存在の大きさに気づくことも少なくありません。
私はこれまでの臨床の中で、その方にとって大切な存在を失ったことをきっかけに、眠れない、気分が落ち込む、食欲がわかない、何も手につかないといった症状が続き、日常生活に大きな支障が出てしまった方々を数多く診てきました。
喪失のあとにみられやすい症状
- 不眠
- 抑うつ気分
- 食欲不振
- 意欲の低下
- 集中しづらい
- 涙が止まらない
こうした反応は、突然の別れのときに強く現れやすいのはもちろんですが、ご病気や衰弱などにより、ある程度心の準備をしてきた場合でも起こりえます。
「覚悟していたはずなのに、実際にその時を迎えたら想像以上につらかった」ということは、決して珍しいことではありません。
「ロス」と聞くと、比較的よく知られているものにペットロスがあります。
たとえ一緒に過ごした期間が長くなかったとしても、生活をともにした存在がいなくなることは、心に大きな空白を生むことがあります。
また、同居していた相手に限りません。昔から親しんでいた有名人の訃報に接したときにも、その知らせを受けたタイミングや状況によっては、強い精神的ショックを受けることがあります。
周囲から見ると「そこまでつらいのか」と思われるようなことであっても、ご本人の心の中では、非常に大きな喪失として感じられていることがあります。
人は一生の中で、さまざまな出会いと別れを経験します。
それぞれの別れには異なる意味があり、同じようには語れません。けれども、そうした喪失の体験が心に影響を与え、うつ状態や不安、不眠などの精神症状につながることは、年齢にかかわらず誰にでも起こりうることです。
「こんなことで相談してよいのだろうか」と思わなくて大丈夫です
大切な存在を失ったあとのつらさは、目に見えないぶん、周囲に理解されにくいことがあります。
ですが、苦しさを我慢し続ける必要はありません。
気持ちの整理がつかない、何をしてもつらさが和らがない、生活に支障が出ている――そのようなときは、一人で抱え込まずにご相談ください。
喪失の痛みそのものをすぐに消すことはできなくても、今のつらさを少しずつ言葉にし、心と体の状態を整えていくことで、出口が見えてくることがあります。
精神科専門医 山田雅弘
